ポストロックとはどんな音楽?

ポストロック(post-rock)は、1990年代後半から2000年代初頭にかけて台頭した音楽ジャンルで、「ロックの構造を脱構築し、より広い音響表現を目指す音楽」とも言われます。
ギター、ベース、ドラムといった伝統的なロックの編成を保ちつつも、ヴォーカルや歌詞の比重は下げられ、代わりに空間的な広がりや感情の起伏を重視したサウンドスケープが中心です。
これは単なるジャンルではなく、ロックの“その後”——「ポスト」ロックを模索するムーブメントであり、各アーティストが独自にその在り方を探ってきました。
ポストロックの主な特徴
- 反復とビルドアップ:ミニマルミュージックの影響が色濃く、同じモチーフを反復しながら徐々に盛り上げていく展開。
- インストゥルメンタル中心:歌ではなく音そのものに感情を託す。
- ジャンル横断的:クラシック、ジャズ、アンビエント、エレクトロニカなどの要素を融合。
- 構造の自由さ:Aメロ→Bメロ→サビといった伝統的な構成からの脱却。
- 映画的/叙情的:風景や情緒を想起させるような音作り。
代表的なポストロック・バンドと名曲紹介
Radiohead – Everything In Its Right Place(2000)
アルバム『Kid A』でロックの範疇を大きく飛び越え、ポストロック的な電子音楽への転換を果たしたRadioheadは、メインストリームでポストロック的アプローチを示した稀有なバンド。
Sigur Rós – Svefn-g-englar(1999)
アイスランドのバンド。架空言語“ヴォンサレンスカ”による歌詞や荘厳なストリングスの使用など、幻想的な音世界を構築。
Mogwai – Auto Rock(2006)
グラスゴー出身の重鎮。ギターによる轟音と静寂の対比が美しい。映画音楽も多数手がける。
Explosions in the Sky – Your Hand in Mine(2003)
アメリカ発、叙情的かつドラマチックなギターアンサンブルが特徴。サウンドのみで物語を語るスタイル。
Godspeed You! Black Emperor – Storm(2000)
ポリティカルで映画的な楽曲構成。20分を超える大作も珍しくない。オーケストラ的なアプローチが新鮮。
MONO(Japan)– Ashes in the Snow(2009)
日本を代表するポストロックバンド。クラシックのような美しさとハードロックのような轟音を共存させた世界観。
※Coldplayについて:初期はポストロック的要素もありますが、ポップ・バラード路線に振り切ったため、ポストロックの本流とはやや距離があります。

ポストロックの現在地と未来
ロックの衰退とジャンルの分解
2000年代以降、ロックバンド文化は徐々に衰退し、ヒップホップやポップス、エレクトロニカがメインストリームを席巻。Spotifyなどのストリーミングサービスの登場により、ジャンルの境界も曖昧になり、ポストロックも「ひとつのジャンル」ではなく「ひとつのアプローチ」として吸収されつつあります。
ポストロックは「音楽の語り方」として残る
今後、ポストロックは形として残るよりも、映画音楽、CM音楽、ゲーム音楽、YouTube BGMなど「物語を持つ音楽」の文法として活用されていくでしょう。
また、アーティストの中でもポストロックの影響は続いており、以下のような新世代アーティストに受け継がれています。
- Caspian
- This Will Destroy You
- sleepmakeswaves
- Hammock
- LITE(日本)
彼らはポストロックを、よりエモーショナルに、あるいはより電子音楽的に進化させています。
ポストロックと「チル」「Lo-Fi」の違いとは?
近年、YouTubeやSpotifyなどのプラットフォームでよく目にする「チル」「Lo-Fi」といった音楽ジャンル。どちらもBGMとしての需要が高く、ポストロックと混同されることもありますが、その本質にはいくつか明確な違いがあります。
Lo-Fi(ローファイ)とは?
**Lo-Fi(Low Fidelity)**は、「低音質」や「粗さ」を意図的に残した音楽スタイルで、ノイズやテープヒスなども“味”として活用されます。主に以下の特徴があります。
- 短く、ループ構造の楽曲が多い
- ジャズ、ヒップホップ、R&Bの影響が強い
- スタディミュージックやリラックスBGMとして人気
- 楽曲の展開よりも「雰囲気」が重視される
代表的なアーティスト例:Jinsang、idealism、nujabes(Lo-Fiの元祖的存在)
チルとは?
**チル(Chill、Chillout)**はジャンルというよりも「心地よい」「落ち着いた」という音楽の“感覚”や“雰囲気”を指します。
- 明確なジャンル定義はない
- エレクトロニカ、アンビエント、R&Bなど幅広い
- カフェミュージック、就寝前BGM、ドライブ用プレイリストなどに使われる
- リズムは比較的一定で、テンションの上がり下がりは少ない
Lo-Fiとの違いは、「音の粗さ」をあえて出すかどうかにあります。
ポストロックとの主な違い
特徴 | ポストロック | Lo-Fi | チル |
---|---|---|---|
主な構成 | 楽器主体・展開重視 | ループ・短尺・ビート中心 | 雰囲気・一貫性重視 |
感情表現 | ドラマチック・映画的 | ノスタルジック・控えめ | リラックス・フラット |
楽曲構造 | ビルドアップ型 | ループ中心 | 一定のテンポと調性 |
使用用途 | 視聴・没入 | BGM・作業用 | BGM・睡眠・リラックス |
例 | Sigur Rós、Mogwai | Jinsang、nujabes | Tycho、ODESZA |
ポストロックは、音楽そのものが「ストーリーを語る」ことを目的としており、BGM的な性格よりも、意識的に聴く音楽です。一方、Lo-Fiやチルは聴き流しや日常生活のBGMとしての機能性が重視されています。
終わりに:ポストロックとは「問い続ける音楽」
ポストロックは、終わったジャンルではありません。むしろ、音楽がどこに向かうべきかという“問い”を投げかけ続ける存在です。形式を壊すことから始まる創造、そこにはまだ多くの可能性が広がっています。
Spotifyの再生数やバズに左右されがちな現代にあって、ポストロックの静かな反抗と内省的な深みは、今なお多くの人の心を打っています。
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