Z世代はパンクなのか?SoundCloudラッパーとDIY精神の共通点

雑記帳

パンクは1970年代のロンドンやニューヨークの若者たちによって、退屈で形式ばった音楽業界への反発として生まれました。そして50年後の今、Z世代の若者たちはまったく別の形で再び「パンク精神」を体現しています。その最前線にいるのがSoundCloudラッパーたちです。

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この記事では、Z世代がどのように現代版パンクを表現しているのか、そしてSoundCloud文化に宿るDIY精神反体制的アティチュードを探ります。


パンクとDIY:手作りの文化が反骨精神を支えた

パンクロックは、音楽的な完成度よりも「自分たちの手で表現する」という姿勢に重きを置いていました。Sex PistolsやThe Clashなどのバンドは、政治的なメッセージや怒りをぶつける手段として、粗削りな楽曲を自主制作し、インディーズレーベルで発表しました。

代表的なパンクバンド:

  • Sex Pistols(イギリス)
  • The Ramones(アメリカ)
  • Crass(DIYアナーコ・パンクの代表)

「下手でもいい」「売れなくてもいい」[自分たちの激情を伝えるんだ」という哲学が、体制への反発や自己表現への渇望と直結していたのです。


SoundCloudラッパーの登場と「宅録」文化の爆発

2010年代後半から登場したSoundCloudラッパーたちは、自宅のパソコンひとつでビートを打ち込み、マイク1本で録音し、そのままインターネット上に公開するという新たな音楽制作スタイルを確立しました。これはまさに、21世紀版のDIYムーブメントです。

代表的なSoundCloudラッパー:

  • XXXTentacion
  • Lil Peep
  • Lil Uzi Vert
  • Trippie Redd

彼らはメジャーレーベルに頼らず、SNSでセルフプロモーションを行い、ファンと直接つながることに成功しました。多くのアーティストは、低品質のマイクで録音した荒削りな楽曲を武器に、数百万回のストリーミング再生を獲得しています。


「反抗」と「感情の露出」が共通言語

パンクもSoundCloudラップも、その中心にあるのは「怒り」「孤独」「拒絶」といった感情の吐露です。

パンクが政治的な不満や社会への怒りを歌ったように、SoundCloudラップもメンタルヘルス、薬物依存、家族問題といった個人的で社会的な問題をストレートに表現しています。

Lil Peepの楽曲《Star Shopping》では、自傷行為や愛情への不安が赤裸々に語られ、XXXTentacionの《Jocelyn Flores》では、友人の自殺をテーマに深い苦悩が込められています。

参考文献:

  • Rys, Dan. “How SoundCloud Rap Took Over the Internet.” Billboard, 2018.
  • Jenkins, Craig. “The Emo-Rap Explosion.” Vulture, 2018.

見た目も思想も「規範に従わない」

パンクファッションが安全ピン、鋲、モヒカンなどで既存の美意識を破壊したように、SoundCloudラッパーたちもタトゥー、カラフルな髪、女性的な服装など、性や身体の規範に反するスタイルを取り入れています。

特にLil Uzi VertやPlayboi Cartiなどは、ファッション業界からも注目を集め、伝統的な男性像を揺るがすアイコンとして扱われています。

これもまた、「こうあるべき」という社会通念へのノー」を突きつける行動と言えるでしょう。


パンクとSoundCloudの違い:政治性と商業性

もちろん、SoundCloudラップとパンクの間には違いもあります。パンクが政治的・集団的運動だったのに対し、SoundCloudラップは個人的・感情的な表現に重きを置いています。また、SoundCloudラッパーの多くはメジャーデビューを果たし、商業的にも成功しています。

この点で、彼らの一部は「パンクの商業化」をなぞっているとも言えます。

とはいえ、「誰にも頼らず、自分のやり方で表現する」という姿勢は、パンクのDNAを確実に受け継いでいます。


Z世代のパンクとは何か?

Z世代は、環境危機、戦争、不況、SNS疲れなど、さまざまな不安を抱えて生きています。その中で彼らは、既存の価値観に従わず、「自分らしくあること」にこだわり抜いています。

彼らにとってパンクとは、ギターをかき鳴らすことでも、ステージで暴れることでもないかもしれません。
それはむしろ、自分の部屋でマイクを握り、内なる声を外に解き放つ行為なのです。


まとめ:現代におけるパンクは姿を変えて生きている

SoundCloudラッパーは、1970年代のパンクロックとは異なるフォーマットで、同じ精神を表現しています。
体制への反発、自己表現の自由、DIY文化という点で、彼らは確かに現代の「パンクス」なのです。

Z世代は、音楽業界の枠を超えて、ファッション、SNS、動画、あらゆる表現手段で自己の声を拡張するパンク世代かもしれません。

もしかすると、今あなたが聞いているあのローファイなトラックこそが、21世紀の“Anarchy in the UK”なのかもしれませんね。


関連リンク・参考資料

  • “The DIY Spirit of SoundCloud Rap,” Pitchfork, 2018
  • “Z世代とは何か?” NHK特集, 2023
  • Jenkins, Craig. “The Emo-Rap Explosion.” Vulture, 2018
  • Rys, Dan. “How SoundCloud Rap Took Over the Internet.” Billboard, 2018

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