① SNSと中学生の危うい恋愛事情
私は中学校で美術を教えています。25年近い教師生活の中で、数多くの生徒と接してきましたが、今回はその中でも忘れられない「SNSをきっかけとした危険な恋愛」の話を紹介します。
中学3年生の女子生徒。美術部に所属していたものの、部活動にはあまり顔を出さず、たまに来ては小さな絵を描き、友達とお喋りを楽しむ、そんな子でした。クラスでも特に目立つタイプではありません。
しかしある日、別の部員から耳にした噂で事態は変わります。
「彼女、SNSで知り合った彼氏がいるらしいよ」
相手は20代後半、遠く離れた県に住む大人の男性でした。
② 初めての「会いに行く」という決断
最初は「SNS上だけのやり取り」だろうと深刻には受け止めていませんでした。しかし数日後、「実際に会いに行く」と聞いた時、嫌な予感がしました。
その後しばらくして彼女が久しぶりに美術室に顔を出し、準備室でこう切り出しました。
「SNSで知り合った男と、この前会いに行ってん」
買い物や食事をして楽しく過ごしたそうですが、その後から毎日のように「会いたい」「手を繋ぎたい」「旅行に行きたい」といったしつこいDMが送られてきたのです。
さらに彼女は「また会う約束をしてしまった」と言います。理由は単純でした。「嫌われたくないから」。
③ 教師として伝えた現実的なアドバイス
思春期の女子は特に「嫌われること」を極端に怖がります。彼女もその一人でした。私は頭ごなしに禁止するのではなく、危険を避けるための具体的な行動を伝えました。
- 二人きりで個室に行かない
- スカートや露出のある服は避ける
- 携帯は常に手元に置く
- 誘いはやんわり断る(「今は歌う気分じゃない」など)
現実的な対応策を知ることで、彼女は少し安心したようでした。
④ 二度目の出会いと逃げる決断
数日後、再び彼女が報告してくれました。
「会ってすぐにカラオケに誘われ、手を繋ごうとされ、肩に触れられた。最後にはホテルに行こうと言われたので、ダッシュで逃げた」と。
彼女は勇気を持って逃げ出し、その後は相手をブロックしました。SNSの使い方も「恋愛や出会いはしない」と自ら決めたそうです。
⑤ SNSと子どもを守るために大切なこと
この経験を振り返ると、彼女を守ったのは私の言葉ではなく、彼女自身の警戒心と行動力 でした。
ただし、この出来事から学んだことは大きいです。
- 子どものうちはリアルで人間関係を育むこと
- SNSでの恋愛や出会いは大人になってから
- 女性は特に警戒心を持つ必要がある
SNSは便利ですが、同時に「簡単に騙される危険な場」でもあります。特に年齢差がある場合、子どもは大人の思惑に利用されやすいのです。
⑥ 教師としての気づきと結論
私はこの出来事を通じて、教師ができるのは「禁止する」ことよりも「現実的なリスクと対処法を伝える」ことだと痛感しました。
その後も彼女は卒業後に時々顔を出し、近況を話してくれました。数年後、「結婚しました」との報告をもらった時は心から安心しました。
⑦ 保護者・学校へのアドバイス
この経験から、保護者や学校に向けて伝えたいことがあります。
- 日常的にSNSの利用状況を確認する
「監視」ではなく「会話」で。子どもが安心して話せる関係づくりが大切です。 - SNSの危険性をリアルに伝える
抽象的な「危ない」ではなく、実際に起こりうる被害例を具体的に話すことで理解が深まります。 - 学校と家庭の連携を強める
SNSトラブルは家庭だけでも学校だけでも解決できません。教師と保護者が協力し、子どもが相談しやすい環境を整える必要があります。 - 親自身も子供の使っているアプリを使ってみる
このことが実は一番重要なことかもしれません。頭ごなしに子供のSNSを監視し、規制をするのではなく、親自身も実際使ってみてそのアプリの利便性や危険性を把握することが子供との信頼関係を生むことになるでしょう。
SNSを完全に禁止するのは現実的ではありません。しかし、正しい知識と対処法を子どもに伝え、リスクから自分を守る力を育てることこそ、私たち大人の役割だと思います。
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